フリーエンジニアとして自由な働き方を実現できる一方で、クライアントとのトラブルに巻き込まれるリスクも存在します。ただし、事前の知識と準備があれば多くのトラブルは回避でき、被害を最小限に抑えることが可能です。特に注意したいのが契約トラブルです。口約束は後々のトラブルの原因となるため、必ず書面で契約を交わし、業務範囲、納期、報酬額、知的財産権の帰属、秘密保持義務、違約金などを明確に定めておきましょう。契約内容に変更が生じる場合も、必ず書面で変更契約を締結することが大切です。
【事例】契約書を交わさずに口頭だけで合意したWebサイト制作の仕事。クライアントから、後から「スマホ対応もしてほしい」と追加の作業を要求されたが、当初の合意には含まれておらず、追加報酬についても話し合われていなかった。
【対処法】まずは口頭での合意内容を丁寧に確認し、現状の認識の相違を明確にします。そのうえで、スマホ対応作業を追加する場合は、改めて書面で契約を結び、追加報酬についても合意を取り付けましょう。交渉が難航する場合は、専門家(弁護士など)に相談し、法的措置を検討することも可能です。
【予防策】案件規模の大小に関わらず、必ず書面で契約を交わす習慣をつけましょう。契約書には、業務内容、納期、報酬、知的財産権の帰属、キャンセル料、仕様変更時の対応などを網羅的に記載し、将来発生しうるトラブルを予防します。
報酬はフリーエンジニアの生活の糧です。報酬額、支払い時期、支払い方法などを明確に定めた契約を結び、未払いが発生した場合は迅速かつ適切な対応が求められます。
【事例】システム開発のプロジェクトを納品後、何度請求してもクライアントから報酬が支払われない。
【対処法】まずはクライアントに連絡し、支払遅延の理由を確認します。連絡が取れない、あるいは正当な理由がない場合は、督促状を送付します。それでも支払われない場合は、内容証明郵便で支払いを催促しましょう。内容証明郵便は、送付した事実と内容を法的に証明できるため、後の法的措置で有効な証拠となります。それでも解決しない場合は、弁護士に相談し、少額訴訟などの法的手段を検討します。
【予防策】契約書に報酬額、支払い時期、支払い方法を明確に記載するのはもちろん、着手金や中間金を設定することも有効です。また、納品前に請求書を送付し、支払い状況を確認する習慣をつけましょう。
フリーエンジニアにとって、制作した成果物は大切な財産です。著作権侵害やアイデアの盗用から自分の権利を守るために、契約で著作権の帰属を明確にするなど、事前の対策が不可欠です。
【事例】クライアントが、フリーエンジニアがデザインしたロゴを無断で商品のパッケージに使用した。
【対処法】著作権侵害の事実を証明する証拠(契約書、納品物、メールのやり取り、ロゴの使用状況がわかる写真など)を収集し、クライアントに警告書を送付します。警告書には、著作権侵害の事実、損害賠償請求の可能性などを明記しましょう。クライアントが誠意ある対応を示さない場合は、弁護士に相談し、損害賠償請求訴訟などを検討します。
【予防策】契約書に著作権の帰属、使用許諾範囲を明確かつ詳細に記載しましょう。また、納品物に著作権表示を付記することも有効です。アイデアを提案する際は、記録を残し、日付を明記しておくことで、知的財産権を保護するための証拠を確保します。
フリーエンジニアという立場であっても、ハラスメントは決して許されるものではありません。ハラスメントを受けた場合は、証拠を記録し、しかるべき窓口に相談することが重要です。
【事例】クライアントから、業務内容とは無関係の個人的な用事を頻繁に頼まれたり、人格を否定するような暴言を浴びせられた。
【対処法】ハラスメントの事実を記録し、証拠を保存してください(メール、チャットログ、録音など)。信頼できる人に相談し、冷静に状況を整理しましょう。必要に応じて、弁護士やハラスメント相談窓口に相談し、法的措置を検討することも可能です。状況によっては、契約解除も検討する必要があります。
【予防策】クライアントとの良好なコミュニケーションを心掛け、お互いの認識にズレが生じないよう努めましょう。ハラスメントを受けた場合は、我慢せずに、その場で明確に拒否の意思表示をすることが大切です。
これらのトラブル事例と対処法を参考に、フリーエンジニアとして安心して活動できるよう、適切な対策を講じましょう。日頃から契約内容をしっかりと確認し、必要な証拠を残し、クライアントとの良好なコミュニケーションを維持することが、トラブルを未然に防ぐ最も効果的な方法といえます。