会社勤めをしていると、どうしても会社の指示には従わなければならないという制約に目が行きがちです。しかし基本的には自由市場で相手のある仕事をする以上、何事にも判断や選択の基準があるものです。そしてフリーエンジニアが「自由」であるというのも、全く何の制約もないということではありません。会社では上司や雇用主が決めていたような会社としての方針や秩序にあたるものを、フリーエンジニアとなった自分自ら明確にしなければならないのです。そのような自分の判断と選択に責任を持つが故に、フリーランスとしての仕事のやりがいも生まれます。フリーランスになって不安を感じる点として、仕事をコンスタントに受注できるのか、を一番に挙げる人は少なくありません。どんな業種であれ、会社の後ろ盾を失っていきなり仕事がどんどん舞い込むということはごく稀です。それは最近のIT化で人手不足と囁かれているフリーエンジニアであっても同様です。実際の仕事の紹介は、知り合いや先輩の伝手を辿ったり、エージェントに頼ったりしているのがほとんどであり、こうして紹介される仕事をどのような基準で選択するのか、という点をよく考えておかなければならないのです。
もちろん途切れずに仕事を受注できればよいのですが、たとえそうであったとしても、仕事を完成して納品してから支払いを受けるまでに若干の期間が空くものです。大きなプロジェクトに参加していれば、数か月間作業をし続けても分割払いもままならないかもしれません。まして思うように仕事を受注できなければ、現金が手元に入らない心配は常に生じます。従って半年から1年分ほどの生活費と事業資金をまかなえるだけの貯金があると、心強いでしょう。またフリーエンジニアは基本的に報酬額をクライアントとの交渉によって勝ち取らなければなりません。会社に対して個人というのは立場が弱く、ともすれば安く叩かれてしまいますが、一度安売りしてしまうと同じクライアントに対して値上げは難しいものです。従って仕事に対する見積もりは、ある程度客観的な線も念頭に置きつつ、あまりに低い金額の場合やあれこれ修正を繰り返しながら報酬金額についてはあいまいなままにされるような場合には、断る勇気も必要です。
このように会社員と比べれば厳しい一面もあるフリーエンジニアですが、だからこそ自分の仕事に誇りを持つというのは非常に大切です。自分で選んで自分を信じて自分の精一杯をつぎ込んで一つの仕事をやり遂げた時、深い充実感と誇りが胸に沸き起こることでしょう。そしてそれこそがフリーエンジニアとして仕事を続けて行くことができる原動力になるのです。